こんなに真っ白なうつくしい毛並みをもっているのに、こんなに雪が降ってしまったらもったいないじゃないか。と、シロクマはいつも子どものころから、冬になるとそんなふうに思っていた。それを聞かされた、より真っ白でうくしい毛並みをもつ親クマは、わたしたちの白いからだは、そうやって雪に溶けこむためにあるんだから、誇りに思うんですよ。とシロクマに言い聞かせたが、シロクマはそれがまったく理解出来なかったのを、いまでもずっと覚えている。いまとなっては、そうした親クマのことばも、まったく理解出来ないというほどではないが、それでも、自分の真っ白なうつくしい毛並みが大好きだからこそ、雪にとけこみたくないな、という気持ちがのこりつづけた。だから、雪がすくないこの土地に、ポシェニギとしてやってきたことはうれしかった。ここでは冬の間にいちどぐらい、ちらほらと雪が降る。そのときだけ、あの真っ白でうつくしい親クマのことばを思い出して、なんとなく切なくなったりするのだった。