Mail Angle_up Angle_down Angle_left Angle_right Menu_open Menu_close prev next byebye
076 / 999
2023 poche-nigi

2023-076

クマがまだクマのままだったころ、自然もまた、自然のままだった。
いつのまにか靴の中に入った小さな石つぶが、取ろう取ろうと思っているうちにいつのまにか気にされなくなってきて、意識にのぼることもないぐらいあたりまえになってしまうように、クマも、クマのままだったころに比べると、もう、人々の意識にのぼることもないような、あたりまえのクマになっていった。そしてそのクマの変化にあわせるように、自然という大きな存在もまた、そうして自然らしさが遠くにはなれていった。
クマはまだクマだったころ、こんなふうに人間の肩からぶらさがったりして、ニギニギと感触を楽しまれるようにつかまれたりするとは思ってもいなかった。ちょうど、自然という物が街のなかに人為的につくられて、まるで昔からそこにあった憩いの場として親しまれているような、そんな感じがした。
クマはでも、そうした状況を悪く思ってはいなかった。でも他の、いまもクマのままでいる他のクマだったらどう思うんだろう。そうクロクマは、そのふっくらとした身体をニギニギとされながら、考えていた。