ニギニギの手のむこうには、山嶺が優雅にひろがる。
人の営みの中でもっとも重要なものは、ニギニギだ。
あらゆる感覚が、そのニギニギにつながり、
うまれたときから、大人になってからも、ひとはニギニギにとらわれる。
ニギれると安心する。ニギれると幸せになる。
ニギれないと不安になる。ニギれないと無性に悔しくなる。
ニギることをいとわなかったために、その手からするりと何かが逃げいくこともある。
ニギることを諦めた瞬間に、その手のひらにもとめるものが降ってくることもある。
ニギニギの手のむこうには、
そうした人生という豊かな山嶺が、
厳しくも優雅にひろがっている。