(おおかみをニギってやろうなんて、考えたおれが甘かった、、、)
赤ちゃんは天を仰いで、そう叫びたい気持ちだった。
水飴のようにしたたり、ヨダレが伸びていく。
まるで一直線に目標を貫こうとする弾丸のように、
天を仰いだ赤ちゃんのそのおむつの、
ギャザーの隙間めがけて、ヨダレは光輝く。
いままさにその弾丸が、おむつのギャザーにするりと侵入し、
桃のような肌を赤くかぶらせようとした瞬間だった。
そのヨダレは永遠におむつのギャザーに到達することはなく、
青いグリッドのガーゼに消えていった。
それはおおかみだった。
おおかみは、あかちゃんを見捨てたわけではなかったのだ。
(つづく)