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2022 sta-nigi

2022-088

見渡す限りに白く、氷と雪とで覆われた平原。
行けども行けども、地平線の先にまで続く、白い平原。
この世界では、黒いものは僕の鼻頭しかないように感じられる。
ときどき、あてもなく真っ白い中を歩いていると、
ふと自分の黒い鼻頭だけがふわふわ浮いていて、
この真っ白い世界を浮遊するただひとつの黒いものだと錯覚するほどだ。
ふわふわと浮いた黒い鼻は、やがてぼんやりと青く光るうつくしい鉱石をみつけた。
それから僕は、大部分の白とすこしの黒に、
ぼんやりとした青く光る美しい身体になった。
すると不思議と、もう、黒い鼻頭だけふわふわと浮いているような、
そんな錯覚はしなくなったのであった。