「儀礼的共同主義とでも表現できるような、奇妙な関係性が、わたしと赤ちゃんにはあるんです。」
ふかふかの身体をときどきノソっと居心地わるそうにゆらせて、しろくまはそういった。過剰にもこもことさせたその真っ白い身体をよく見ると、そのものすごい密度の白毛に吸い込まれそうな錯覚に陥る。まるで延々と奥につながっていくように感じられる、バックりと割れた雪山の谷底のような、そんな優しさと強大さを併せ持った迫力が、そのひとつひとつ密集した白毛の集まりのなかに内包させている。
「僕が彼を求めるとき、また彼も僕を求めている。そんな関係が続くと、どうなると思いますか?」
質問を投げかける。語気がぐっと強まる。その迫力とミスマッチなピンクのドットがまるで、暗闇の中に転々と光る街路灯のようにちらちらと目に入ってきて、定期的に思考を捉える。
「つまりは新しさです。それがすべてと言ってもいい。新しい関係性だ。わたしと赤ちゃんのね。」
言葉とともにすっとあげたもこもこの手が、私を覆う。この手はたくさんの赤ちゃんにニギニギされてきた。そのひとつひとつが、家屋を押しつぶすような積雪の重みとなって感じられる。赤ちゃんの時代が始まったのだ。そう、感じた瞬間にはもう、涙が流れていたのを覚えている。