うさぎは幸いにして、自分のしごとがどんな結末をもたらすのかを知っていた。うさぎがよりそうべき相手はつねに、大人や、大人をとりまく生まれたての価値観ではないということを、知っていた。うさぎのしごとは、この世界に連綿とつながる、あっというまに生まれては消えていく、ニギニギするという原初的な動作を、しかし、原初的ながらもまったくすべての生命に力強く必要である動作を、そのわずかな期間ではあるが伸ばすためのしごとであるのだ。そうウサギは理解していた。そしてこのような、ほとんどの大人が自分がほんとうに何をしたいのかわからないような時代において、そうした理解があることはほんとうに幸いなことだ、と心から思っていたのである。