もうこの街はダメだ。この街にずっといたら、きっとこのまま、何も変わらない。ずっとモヤモヤとした、自分への、自分を取り巻く環境への不安を、抱えつづけてたシロクマがついにそう言葉に出して、そしてその言葉とともに行動に移したのは、もう5年も前のことだ。このまま漫然とどうにもならないなら、せめてどうにもならないなりの納得をしたい。そう強くおもうのに長い時間が必要だったが、その時間も、シロクマには大切な時間だったと思えている。そうしてシロクマは、ローンの門戸をたたいた。初めてシロクマがローンにやってきたことを、ローンはよく覚えている。なにか目に見えない不安にいまにもつぶされそうで、自信なんてこれっぽっちも感じられないシロクマをみたローンは、この子が立派なニギニギになれるのだろうか、という不安があたまに広がった。しかし、その、すがるようにふさふさとさせていた毛並みから発せられるメッセージが、ローンを行動にうつしたという。そしてまあ、なんやかんやあっていまでは、ポシェニギーとして立派にやっている、というわけです。