赤ちゃんが好きな色だから、その色が「赤」と呼ばれるようになったのか、赤という色が好きだから、「赤ちゃん」と呼ばれるようになったかはいまではわからないけれど、とにかく、赤ちゃんと赤の関係性はふかく、お互いの信頼で結ばれているものである。赤ちゃんが赤を惹きつけるとき、赤もまた赤ちゃんを惹きつけている。赤とともに育った赤ちゃんは、赤ちゃんとともに育った赤のように赤い。夕暮れ時と朝焼け時と、世界が赤く染まるころには、赤ちゃんもまたぱっと目を見ひらいて、赤い空と同じような力強さで、赤々とした鳴き声をあげる。赤ちゃんが好きだから「赤」と呼ばれるようになった赤と、赤という色が好きだから「赤ちゃん」と呼ばれるようになった赤ちゃんとのあいだには、そうした信頼関係があるのです。