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2023 sta-nigi

2023-063

くまは、本当に満足をしたような顔をして、言った。
「もう、ずいぶんと、きみに、ニギニギされなくなったなあ。」
くまは、本当に満足をしたような顔をして、言った。
くまはもう、彼の首に、だいぶ長いあいだ、ぶらさがっていなかった。
「ああ、あんなに一緒にいたのに。」
と、最初は思っていた。だけど、だんだんと、彼がどんどんとひとりで、いろんな物をつかんだり、どんどんとひとりで、いろんなところにでかけていくのを、タンスのなかからみていたら、だんだんと、寂しくはなくなっていった。
「もう、あとは、大丈夫なんだなあ。」
そう思ったときに、なにか悲しいような、嬉しいような、自分が、自分じゃなくなるような、それなのに、ほんらいの自分に、もどったような不思議なきもちになった。
くまは、いまは本当に満足をしたような顔で、そうした不思議さは、そのままでいいんだ、と思えるようになっていた。