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2023 sta-nigi

2023-058

じっとこちらをみている、スタニギーのゾウの、ちいさな瞳。
じっとりと輝いているその球体をのぞき込むと、ちいさなちいさな、あんぱんのような塊がみえた。
ああ、これは、わたしの手ってだ。
そう、気がつくまでに大分時間がかかったが、その長い時間の間も、スタニギーのゾウの、じっとりと科学焼くような重く優しいまなざしは、変わることはなかったのを、今でも覚えている。
いま、わたしは、寝返りもひとりでできる。おむつが重く冷たくなったときに泣いて誰かを呼ぶことも出来るし、なんなら、あーとか、うーとか、そういった言語を発することさえ出来るようになった。
じっとこちらをみている、スタニギーのゾウの、ちいさな瞳。
その瞳にうつる手は、さいしょにわたしが、これはわたしの手ってだ、と気づいたときよりも倍ぐらいのおおきさだ。
じっとこちらをみている、スタニギーのゾウの、ちいさな瞳。
それだけが、変わらない距離感で、そうしておおきくなっていく私の手を、捉えつづけている。