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2022 sta-nigi

2022-168

-stanigi167のつづき
ぺらっとした布の時代も嫌いではなかったシロクマは、あるひ突然快適な倉庫から出されて、しらない人の家に連れて行かれた。
そこから先は、あまり思い出したくもないつらいことの連続だった。
まず、刃物のようなものでいろいろなところを切られ、そのあとすぐに、熱く重い鉄板のようなもので身体中をくまなく押しつけられた。そのとき自慢のフカフカが、だいぶぺったりしてしまったように感じる。
そしてさらに、とがったものでほんとうにあちこちをちくちくやられ、気が遠くなっていくのを感じた。
そして気がついたら、シロクマの形をしていたのである。
そんな過去を思うと、いま、こうしてニギニギされたり、よだれを吸ったりしている人生は、なんとした平穏だろう。と感じるのだ。
願わくば、この赤ん坊も、そのような平穏を生きていってほしい。
シロクマはヨッとあげた手をニギられながら、そんなことを思うのだった。